アカデメイア・オブ・コンプライアンス
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A)ワークライフバランス活動の認知度が高まらない一因

 過去、ある場所で「ワークライフバランスの活動団体を見ていると、『言っていること自体は正論だが、運動に対してはある種の胡散臭さを感じる』」という趣旨のことを言ったことがあります。

 話しが終わった後、私の話しを聞いて下さった聴衆の一人から「ワークライフバランスの活動に対して反対する人がいるが、その理由が少し分かった」という趣旨の言葉を頂きました。

 ちなみに、胡散臭さを感じる主な理由として以下を話しました。

  • ワークライフバランスと言いながら実際は福利厚生向上の議論に終始している。
  • 欧米の例や論を引き合いに出す以上の内容になっていない印象を受ける。
  • 正しいことを言っているが、運動の姿勢がかたくなで、自分の言いたいことをひたすら主張することに固執しているように見える。
  • 結果として、「特定のイデオロギーを一方的に主張する団体」のようである、或いはそのような団体による「一方的な価値観や見解の押し付け」として受け取られてしまう。

 もちろん全てのワークライフバランス活動がそうではないと思いますし、全く異なる印象をもつ方もいらっしゃると思います。このサイトを読まれた方はどう思われますでしょうか?

B)大切なことは「素直に受け入れてもらうこと」

 せっかく素晴らしい提言をしているのですから、多くの人に「その通りだ」と思ってもらうことが重要です。そのためにはどのように活動を進めていけばよいのでしょうか?

 分からないなと思ったら、

  • どのように話されたら自分と違う価値観や意見に対して否定的にならないか?
  • なるほどなと素直に思わせる人というのはどんな人格だろうか?
  • どういう態度で接してくれたら協力しようという気持ちになるだろうか?

ということを考えて見ることをお勧めします。

C)人事戦略としてワークライフバランス実現させるためのアドバイス

 人事コンサルティングの立場から、率直に申し上げます。

 現在話題になっている、または導入されている具体レベルの施策は、経営の視点から見れば福利厚生の一部に過ぎません。(誤解の無いように申しあげますが、福利厚生として一定の範囲での効果は望めます)

 ワークライフバランスの専門家やコンサルタントが提唱しているあるべき姿や全体像は、抽象論の域を出ていません。またそこで指摘されている問題点や課題は、既に人事を含む様々な領域のマネジメントコンサルティングや人材育成の世界で取り扱われているものも少なくありません。ワークライフバランスという文脈で語られていなかっただけです。ワークライフバランスのトレンドに乗ったところで、簡単に解決できません。

 話しを整理すると、以下のようになります。

  • 現在導入されている/導入が検討されている具体レベルの解決策は、経営的な視点から見れば、福利厚生の一部である。
  • 福利厚生の域でとどまっているのであれば、業績が悪くなれば削らざるを得ない。
  • 削らないよう提言したところで、資本の論理に勝つのは非常に難しい。
  • 現在議論されているワークライフバランスの理念や全体像は、経営的な視点から見れば、極めてスローガン的・抽象的である。
  • スローガンは世の中の風潮がそれを後押ししている間は力を持つが、逆風が吹けばあまり注目されなくなるという限界がある。

 ワークライフバランスを人事戦略として取り扱うのであれば、問題を取り上げる際の視点や掘り下げる深さをもっと高めましょう。質を高めなければ、この流れも一過性の流行で終わってしまいます。

 戦略と言う言葉は聞こえがいいので使う側も聞く側も気軽に用いますが、今のレベルで戦略として通用させるのは難しい。世間の風潮やトレンドに自分の実感を乗せただけでは、資本の論理には勝てません。

 厳しい言い方ですが、これが現実です。

D)ワークライフバランスの将来を左右する力を持ち得るみなさんへ

 このように経営や資本の論理を念頭に置きながら現在のワーク・ライフバランス推進活動を見ると、「これからが大事だ、これからこそが本番だ」と強く感じます。
 このままでは経営の一番生々しい、悩ましい、難しい部分を知らない「評論家風情」として扱われかねないからです。

 本当の意味で経営者を認めさせかつ認められ、対等に議論するために、経営についてもっと学びましょう。

例えば、

  • 「働くとはどういうことなのか?」
  • 「企業とは何か?」
  • 「コストと利益の関係は?」
  • 「現在の我が社の一番の課題は何か?それが実現できていなのはなぜか?」
  • 「業績向上とワーク・ライフバランスをどうやって両立させようと考えているのか?」

などの問いに対し、借り物でない自分の言葉で、間髪いれずに答えられるよう勉強しておきましょう。

 そして、まずは主張する本人が、会社の中で周囲を認めさせるだけの成果や付加価値を出す必要があります。

E)すぐに行動しよう

志は高く持ち、出来ることから始める。

 さあ、経営のメカニズムや経済問題を学び、広い視野を持ちましょう。スキルや実力をさらに高め、仕事で結果を出しましょう。

その姿勢と行動が、周囲を振り向かせる大きな原動力になります。